愚民観:あなたが選挙に行かない理由

東京都議選、投票率前回やや下回る…午前10時現在 (Yahoo)

公職選挙法143条をご覧下さい。

第143条(文書図画の掲示)

「選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号のいずれかに該当するもののほかは、掲示することができない。

5.前各号に掲げるものを除くほか、選挙運動のために使用するポスター選挙運動のために、アドバルーン、ネオン・サイン又は電光による表示、スライドその他の方法による映写等の類を掲示する行為は、前項の禁止行為に該当するものとみなす。(以下略)」 

私の家にも赤い文字の封筒が渋谷区選挙管理委員会から届いています。

通常私が投票する場合、投票所の手前に立ててある候補者ポスターをチラっと見て、一瞬の判断で決めなければなりません。

これだけインターネットが普及した現在、ぜひ投票前にゆっくり各候補者のホームページを見て決めたいところです。

東京都の場合、選挙管理委員会のホームページで重いPDFファイルが開くのを待つと、各区の候補者名だけは見ることが出来ますが、それが各候補者のホームページにリンクされているようなことはなく、候補者名をひとつひとつ検索窓に入れて候補者のページを引くことになります。

渋谷区では、ホームページを独自に設置していた候補者が3名、党のページに候補者の記事があったのが1名。

東京都選挙管理委員会のホームページによれば、「選挙運動にわたらない純粋な政治活動として、インターネットのホームページを利用する事は自由に出来ます。しかし、選挙運動期間中に開設したり、書き換えたりする事は、禁止行為となり、公職選挙法に違反します。」との見解に落ち着いているようです。

どうやら公職選挙法はホームページによる選挙運動について、あまり前向きでないようです。

今日はこれがなぜなのか、ネットの片隅で考察してみましょう。

そもそも選挙運動とは、特定の選挙における特定の候補者の当選を得ることを直接の目的としてなされる行為で、「選挙運動の公正を維持するため」、厳しく拘束されているのだといわれます。

しかし私たちの国の公職選挙法は、他の国に類を見ないほど、際だって厳しく選挙運動を制限されているという事実はあまり知られていません。

皆が投票所から足が遠のいているのには、そこにちゃんと遠因があるのです。

選挙とはあなたの意思を直接、社会の形に及ぼそうとするほぼ唯一の方法です。

たとえばあなたがブランド物のバッグが好きなら「区は年に一回、区民にどこぞのブランドバッグを支給すること」という理念を掲げている候補者に投票していいのです。

このひとりひとりの声が社会の運転士に届く制度を「国民主権」と呼びます。

この仕組みにおいて、いったいどこの候補がブランドバッグ好きなのかを知ることは非常に重要な要素ですので、選挙運動はこの意味で本来尊重の上に尊重を重ねるべき手続きだといえます。

もちろん夜間の選挙運動などが制限されるのはもっともですが、なぜ公職選挙法は大切な選挙運動に対して、事前運動や事務所の数、選挙カーに乗り込む人の数まで制限しているのでしょう。

この点憲法学の浦部法穂先生によれば、驚くべきことに現在の公職選挙法の厳しすぎる要件は、初めて一般人が立候補することを許された普通選挙法の中で、一般庶民の意思が選挙に反映されるのを阻止しようとした厳しい選挙運動制限規定が、ほぼそのまま継受されているのだということです。

しかし1925年当時と現在では、主権のありかが天皇から国民へという180度違った場所にあり、現在の砂漠のような味気ない選挙活動をもたらす公職選挙法では皆が投票所から足が遠のいていることも公職選挙法の成り立ちからもたらされているとさえいえます。

「選挙に行こう!」と啓蒙活動のアクセルをしながら、公職選挙法がまるで我々が投票することにサイドブレーキをかけているような状態です。

個人的には、たとえば選挙運動中は選管が運営するサーバで、統一フォーマットに従い、公式ホームページを各候補者ごとに並べ、自身のオリジナルページは選挙期間中閉じさせるなど、公平さを保ったままインターネットを用いてより有益な情報を有権者に届ける方法などいくらでもあるように思います。

公職選挙法の読み方として選挙運動を「悪」とばかり捉えるやりかたをわたしやあなた自身が選択していないとしたら、いったい誰がわたしたちを投票所から遠のけようとしているのか、一度よく分析してみる必要があります。

 

 

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