ジゴロウのあとには対価が置かれた

「saku saku」のキャラクター「増田ジゴロゥ」降板(ヨコハマ経済新聞)
tvkテレビ神奈川)で毎週月曜日から金曜日の朝7時30分から放送している30分番組(同日夜24時05分から再放送)「saku saku」は7月1日の放送で、人気マペット「増田ジゴロゥ」と「ペパー」が本日付けで降板する事を発表した。同番組ホームページでは、sakusakuスタッフ一同からのコメントとして「新たな "強力フワフワ系パペット" がやってきて、アパートの新たな管理人として出陣!です。これからもひとりでも多くの人たちに "笑って"もらえるように"癒し"(!?)になるように努力していきます。いつも応援してくれてありがとう」と"サクサカー"(saku sakuファンの総称) にメッセージを送った。」

商標法36条をご覧下さい。

第36条(差止請求権

商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 商標権者又は専用使用権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。」
 

特許庁の商標出願・登録情報ページで、検索キーワードにジゴロウなどと入れてみましょう。

一覧結果に一件と出ましたので押してみると、登録4700943というものがあり、そこのはバンプレストという会社がジゴロウ、あるいはじごろうで商標を登録済みであることがわかります。

商標とはそもそもどういう性質のものでしょうか。

商人には自分の信用を染みこませる看板が必要ですが、この看板のことを商号と呼び、商人の営業上の信用や評判が化体して、商人の努力が徐々に看板だけで商売をやりやすくしてくれます。

逆に言うと商号を看板を勝手に他の商人に使われると、看板に染みついた評判や信用がガタつく危険性があります。そこで商法の商号に関する規定が商号を保護しています。

しかし商人のそれまでの努力をガタガタにする方法は看板の冒用ばかりではありません。

たとえばあなたが韓国から輸入したノーブランドのスニーカーにナイキのマークを付けてヤフーオークションで販売したとしましょう。

たとえ商品説明で「ナイキです」とは記述していなくとも、有名なスウォッシュマークだけでナイキがそれまで築いてきた製品に対する信頼を横取りできるばかりか、そのスニーカーの品質が確保されていなければスウォッシュマークに対する信用はがた落ちになります。

そこで商人が使用する図形や記号、あるいは商品の名前なども看板と同じく保護する必要がでてくるのです。

これが商標法です。

このようにただのアイディアである無体財産を守る著作権法などと違い、商標法には商人の営業活動に対する努力、そして実際の品質を象徴するマークなどを保護する意味で時間的価値が封入されています(私見)。

これがため著作権はどこに登録などしなくとも、創作すればすぐに発生しますが、商標権は登録しなければこれを主張することが許されていません。

各社が時間をかけて営業努力した結果を、同一のトレードマークに表現させることを避けるためです。

ジゴロウTVKの人気番組に出演する愛らしいぬいぐるみですが、デザイナーに話がないままその商標権がTV局とキャラクタービジネス会社の間で売買されてしまったようです。

キャラクタービジネス会社はそれ相応の対価を払った(商業努力)わけで、商標法36条に基づき権利主張することが認められることになります。

してみると買い取った会社の事を問題の本質としてとらえると問題の解決にならないので、制作者とTV局の内部関係に権利関係に関するちゃんとしたペーパーがなかったところに話の焦点を絞る必要があるように思います。

またこのような皆に愛されるキャラクターをデザインしたデザイナーの方が争う気であれば争い方があるような気もしますし、むしろTV局とデザイナー間の法律関係を明らかにし、本人と今後のデザイナーのための道をつけるためには一度ちゃんと争うことにも意義があるように思います。

かのエジソンも発明にかけた同じだけの労力を、生涯で権利関係の裁判に掛けたといわれています。

デザインやアイディアを考える努力というのも相当才能が必要とされますが、案外売る努力、権利を戦う努力というのも同程度の才能を要求されるものです。

世に発明家を目指す主婦は五万といますが、発明を買い取る側で販売努力を請け負う会社はごくわずかなのはそれがためです。

 

 

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