くじらバーガーへの非難と選民思想

「くじらバーガー」を非難 英国の動物保護団体 (産経新聞)
「ロンドンに本拠を置く動物保護団体WSPAは24日、北海道函館市のファストフードチェーン「ラッキーピエロ」がミンククジラ肉で作った「くじらバーガー」を発売したことに対し「腹立たしい悪趣味な宣伝行為にすぎない」と強く非難する声明を出した。」

国際捕鯨取締条約の第3条をご覧下さい。

国際捕鯨取締条約
 
「第3条 締約政府は、各締約政府の1人の委員からなる国際捕鯨委員会を設置することに同意する。各委員は、1個の投票権を有し、且つ、1人以上の専門家及び顧問を同伴することができる。」

18世紀後半、イギリスで産業革命が起こりました。

紡績機や蒸気機関車の発明で手工業から大規模な工場生産に変わり、農業中心だったイギリスは世界各地から原料を輸入しては製品をつくり輸出する「世界の工場」と呼ばれるようになりました。

その象徴こそ、今名古屋で行われている「万国博覧会」であり、その第一回は産業革命華やかなりし頃のイギリスで、「みよ、イギリスの工業技術を」という意気込みのもと開催されています。

しかしあなたも中学校で習ったように、産業革命は生活をどんどん豊かにしたばかりではなく、それまで自分の口を自分で食べさせていた農民を、土地の囲い込みにより都市に追い出し、低い賃金で長時間人の仕事の為に奉仕する存在に変えました。

月給で生活する大量の労働者階級の誕生です。

さらに産業革命は、人工の爆発的増加の原因となりました。

そして今や人類は60億人となり、食物連鎖の頂点に立つ数としては不適切なまでにふくれあがりました。

これを最初に杞憂したのが「ローマクラブ」の発表した「成長の限界」という提言です。

捕鯨の禁止はこの「成長の限界」のなかではじめてうたわれましたが、食物連鎖をこわすきっかけをつくった産業革命の国の主役であるホワイトアングロサクソンが、ローマクラブを牛耳っているなどとささやかれています。

突然海の向こうから「おまえらの捕まえてる動物を殺すのをやめろ!」と怒鳴られても「え?」となったのが最初の日本人の正直な反応だったと思うのですが、きょとんとなったのはくじらを食べることを日本人の誰も「悪い」などと発想しなかったからに他なりません。

元々キリスト教信者にとって神は絶対的奇跡を起こす存在、人や人が食べるための動物は神が最初からこの地に創ったと信じており、そのため今日も何万頭もの牛の頭を切り落として血まみれにすることに抵抗はありません。

しかしダーウィンの唱えた進化論、すなわち猿から人が進化したとする考えに対しては、結果的に神の絶対を否定する思想として発表当時から激しい迫害が向けられており、現在でも欧米の信仰レベルでは根強い反発があります。

そのため欧米からは「神によって人の食べ物として創造されていないクジラ」を食べる私たちのような国に向かって、IWC総会で私たちの代表などに「野蛮人!」と罵る声が飛ぶことになります。

キリスト教を世界中に布教した時代から、彼らの哲学にはふつふつと「人が猿から進化した」とするダーウィンの進化論に対する反発が埋め込まれ続けている、それがクジラやマグロが私たちの食卓から姿を消そうとしている事の本質があるように思えてなりません。

国際捕鯨取締条約3条1項は捕鯨にかかわりがあろうがなかろうが、小さな国も大きな国も、いままでクジラなんて見たことのない暑い大陸の中央にある国でも一票をもつことを定めています。

このためかつてのイギリス支配下にあったような大陸中央に位置する小国までもが、欧米に同調して反捕鯨に一票を投じる事態となり、政治力学上優位な国にとって、3条1項はフェザータッチ・トリガーになっています。

個人的にはかわいいクジラやイルカをとってまで食べたいとは思いませんが、抗議活動が素朴な愛護精神からでなく、野蛮人と他民族を罵ることで、民族にも神が与えた階級があるとする選民思想を再確認しようとする団体が万が一にもあるとすれば、話の性質が全く異なってきます。

「あなたの祖先は猿だと認めますか?」

そんな質問が意外と反捕鯨勢力に属する人たちの素のリアクションを引き出すかもしれません。
 

 
法理メール?