穀物で世界をコントロールしよう

リンゴ検疫、日本敗訴の最終報告 WTO産経新聞
「日本の輸入リンゴ検疫制度が厳しすぎると米国が訴えていた通商紛争で、世界貿易機関WTO)の紛争処理小委員会(パネル)は23日、日本側敗訴の最終報告を公表した。リンゴの木がやけどのような症状を起こす「火傷病」に対する日本の検疫制度には科学的根拠がなく、WTO協定に違反しているとの米国側の主張を認めた。」

世界貿易機関を設立するマラケシュ協定、附属書2の17条第1項をご覧下さい。

第十七条 上級委員会による検討(常設の上級委員会)

「紛争解決機関は、常設の上級委員会を設置する。上級委員会は、小委員会が取り扱った問題についての申立てを審理する。上級委員会は、七人の者で構成するものとし、そのうちの三人が一の問題の委員を務める。上級委員会の委員は、順番に職務を遂行する。その順番は、上級委員会の検討手続で定める。」 

世界貿易機関、WTOはマラケシュ協定に基づいて95年1月に生まれた貿易調整機関です。

その仕事は各国に立つ不公平な法律的貿易障害を地均ししていこうというところにあります。

しかし一方でその理屈は貿易に用いることの出来る材料を持った富強国、あるいは輸出物をもつ国を現実的に統治している国の理屈であることは間違い有りません。

実際にWTOでは貿易に関して揉めに揉めた時、上級委員会に上訴することができますが、この上級委員会はたった七名の常任委員しかおらず、しかも事件を担当するのは三名だけです。

そして彼ら三名の出した結論には、日本は無条件に受諾しなければなりません。

果たして上級委員会を構成する三名の胸の内に弱小国家と強大国家の言い分が公平に存在できるものなのかとっても不安なところですが、現実に世界のトレードはこういう権力集中機構によって取り仕切られています。

人間がこれがなければ生きていけないもの、それは空気、水、そして食べ物です。

空気や水(雨)はさすがに特定国によるコントロールはできませんので、世界の富を握る国が世界を支配する最強のツールは食べ物ということになります。

他国の食料産業による市場コントロールによって、自国が従属させられる問題は俗に食料安保と呼ばれます。

もし各国の食料自給率が下がり、穀物メジャーが食料とその肥料や農機具、科学技術の輸入を全世界に強制できれば、食べ物は人の命にかかわるため、その支配力は目もくらむほどに強固になるはずです。

19世紀後半、アメリカに生まれた市場に株式を上場していない穀物財閥によって、世界の形は実際にそれに近くなっているといわれます。

欧州各国は食糧安保の観点から軒並み80%以上の穀物自給率を維持していますが、日本や韓国は30%を切っており、まさになすがままという状況です。

こうなってくると私たちの国の立法制度は、WTO上級委員会に座る三人の前にいかほどの力があるのかさえ疑わしくなってきますが、グローバリズムという、国によっては暴力に近い理念に基づきWTOは今日も貿易障害を地均しし続けます。

極論すれば、世界の飢餓に苦しむ10億の人と、肥満に苦しむ6億の人の命運はWTO上級委員会の三人の手に握られているとさえ言い換えることが可能です。

マラケシュ協定、附属書2の17条第1項により、地球上にそのような権力が集中する椅子が三脚しか設けられていないそのこと自体が、WTO設置の方向性を表しています。
 

 
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