スター・ウォーズはギリシャ神話より遙か昔の物語

「スター・ウォーズ」最終作の一般試写会、東京有楽町で朝日新聞

憲法の97条をご覧下さい。

第97条〔基本的人権の本質〕

「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は,人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって,これらの権利は,過去幾多の試錬に堪へ,現在及び将来の国民に対し,侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」
 

私たちの国が人権をどういうものと考えているかについては、97条にある”永久”という、国家体制を越えた表現があることにヒントがあります。

すなわち、どのような国家体制になろうとも、「永久」にそれが保証されるということは天賦人権論を意味すると考えられるのです。

ここで天賦人権論とは、人が生まれながらにして平等で自由に生活の基礎を築き、財産を取得して幸福を追求する権利があるのだとする考え方で、これをもってあらゆる人権団体は国家の枠を超えて活動、主張しようとしています。

もっとも「天賦」にいう「天」は必ずしも神を意味するものではなく、神も含めその概念を許す空の上の舞台を指すものと考えられます。

神にもいろいろいるだろうからです。

ギリシャ神話によれば、神々の前にはまずカオスという混沌があり、やがて大地の女神ガイア(地球)が現れ、自らの息子ウラノスと交わり、テミスやクロノスを生みます。

そしてクロノスから、やがて全知全能の神と呼ばれることになるゼウスが誕生する手筈になってます。

ゼウスの叔母テミスは司法の象徴として今も目隠しをした姿で天秤をもつ銅像が有名ですが、神話上でも、ゼウスの怒りによる大洪水でほぼ死滅した人類から一組の人間の男女ののった箱船をパルナッソスの山で助けたのもテミスだとされています。

ここに全知全能の神であるはずのゼウスでさえ断罪しきれなかったという意味で、人権を神の判断より前から解釈をはじめるための糸口が見られます。

神話を離れても星は星間物質であるガスや塵が固まってできることになっており、それをカオス(混沌)と呼ぶならば、神話の神々も、そしてあなたもわたしも道ばたの花さえも、もともと同じ物質が細胞分裂を繰り返してきた結果だといいかえることが可能です。

ガスが集まった結果が神をも含む世界であるなら、神の意志を解釈しようとする宗教ではガスを集めた”何か”を補足することはとうてい無理な話で、あえていえば老子の言う”名前のつけようのない道”がそれにあたるかもしれません。

天賦人権説の”天”は、やはり提唱者ルソーの思惑を超えて、その辺の位置から定義をし直したほうが、長い年月に対して、よりたおやかな解釈が導けそうです。

さてスター・ウォーズですが、その第一作は非常に有名な一説から始まります。

「A long time ago in a galaxy far,faraway…」

つまりこの物語は、ギリシャ神話の神々が住む空よりもずっと高いところ、私たちの地球がまってできた系譜と別の場所で、ギリシャ神話よりはるか昔にあった物語ということになっています。

地球と別の場所にある星間物質がはるか昔、”道”ではない”フォース”がくるくると宇宙でガスを固めて作った星々のお話ですので、私たちをはぐくむ”何か”の中の調整機関テミスと同じようなものがスター・ウォーズの世界にも現れる保証はありません。

天の存在が固定せず、人の尊厳と天の関係がはっきりしない世界では、人権の前国家性を主張する理論構築ができないのです。

ジャバ・ザ・ハットがハン・ソロ船長を勝手にカーボン冷凍という私刑にしてしまうのも、「それはいまだに誰がゼウスなのか決着がついていないせいだ」と言い換えることが可能です。
 

 
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