特定病院という金看板下で執刀を訓練しよう

「特定病院」承認取り消し 厚労省医療分科会(Yahoo)
厚生労働省社会保障審議会医療分科会は6日、心臓手術を受けた患者4人が相次いで死亡した東京医大病院(東京都新宿区)について、高度な医療を提供する「特定機能病院」の承認を取り消すことを決めた。」

医療法4条の2をご覧下さい。

第4条の2〔特定機能病院〕

「病院であつて、次に掲げる要件に該当するものは、厚生労働大臣の承認を得て特定機能病院と称することができる。
 一 高度の医療を提供する能力を有すること。
 二 高度の医療技術の開発及び評価を行う能力を有すること。
 三 高度の医療に関する研修を行わせる能力を有すること。(以下略)」

特定機能病院とは、上の条文に書いてあるような要件を満たし、厚生労働大臣から特定機能病院と称することを承認された病院のことです。

特定機能病院には特殊で最先端の治療機器、先端技術を備えた医師が存在すると4条の2で認定されています。

このため、この資源を有効活用するために患者はまず一般病院にかかり、治療に特定機能が必要だと認められる患者だけがその一般病院からの紹介状をもって特定機能病院の門を叩くことが許されています。

そしてもしその紹介状がない患者が特定機能病院にきた場合は、初診料のほかに数千円の特別料金が課せられます。

つまりこういった希少な病院の敷居を一旦高くして、ただの風邪や胃炎などの通常の患者が大学病院など権威有る病院に集中しがちな事態を避け、本当にその機器や技術が必要な患者が優先的、効率的に治療を受けられるようにすることで医療全体の機能を活発化しようとした、それが改正医療法4条の2の設立趣旨のようです(私見)。

するとおのずと患者数が限られてくる特定機能病院に対して、国はその穴を埋めるため金銭的な優遇措置を与えています。

そしてその特権を獲得し続けるために、特定機能病院は医療法のなかで設けられた数々の義務をクリアしなければなりません。(第4条の2第1項各号、第12条の3、第24条第2項等。)

仮にもしそれらのハードルにつまずいたとみなされた病院は、医療法29条4項 1号により特定機能病院の認定を厚生労働大臣により取り消され、特権も失うことになります。

いわば医療法4条の2の保護法益は医療制度全体の効率化による私たち国民の健康維持であり、決して病院の偏差値により国から金銭的インセンティブと威光を与えようというところにはありません。

東京医大病院に与えられていた特定機能病院という看板の下、送り込まれてきた患者は、先端技術を期待していただけであり、金看板の館で未熟な医師に繰り返しモルモットにされる事態は想定していませんでした。

またその指導教授も、先端技術にたずさわる学者である前に、患者の生命の前には一職業人として彼の執刀”訓練”を辞めさせるべきでした。

金看板を失って、明日から象牙の塔は町医者の仲間に戻ります。
 

 
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