債権者を凄まじく太らせる連帯保証というドメスティックルール

弟の肩代わり…大石静さん借金地獄(gooニュース)

「原因は一昨年夏に、実弟の借金2億円を背負ったこと。レストラン経営に失敗した弟の連帯保証人だったことから、激しい取り立てを受け、東京都世田谷区の自宅を購入価格の3分の1の8000万円で売却。骨董品をすべて売っても、整理回収機構から自己破産寸前に追い込まれ「1カ月以内に一括で3000万円返済」の条件をのみ、昨年春に何とか仕事仲間から借金して払った。」

民法の454条をご覧下さい。

第454条〔連帯保証人と抗弁権〕

「保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担したるときは前2条に定めたる権利を有せず」

連帯保証人とは、たとえばお金を借りた本人と”連帯”することを、お金を貸した人に対して約束した人のことです。

あなたが誰かの「フツーの」保証人になったときは、あなたには”催告の抗弁権”や”検索の抗弁権”が与えられます。

それは「まず金を借りた本人から請求してくれ」とか「まず金を借りた本人の財産から処分してくれ」などという主張が許されるということです。

あなたは当然のように思われるかもしれませんが、もし「ちょっと名前だけ貸して」といわれてあなたが印鑑を押した署名の欄が「連帯保証人」となっていたとすれば、これらの権利は一切認められません。

それが454条という条文の怖さで、あなたはお金を借りた本人を飛び越えていきなりお金を貸した人に堂々と請求されますし、本人が倒産を見越して家族に家田畑を相続していたら、連帯保証人になってしまったあなたは突然財産を持って行かれる危険もあります。

まずあなたは、知り合いや家族に「名前だけ貸してくれ」といわれたら、「それは私にもいろいろな言い分が認められているタダの保証人のことか、それともあんたと一蓮托生になる連帯保証人のことか」という点をはっきりさせてください。

そうでなければあなたはなんの対価も得ることさえなく、自分と家族の全財産を債務者のふるサイコロに預ける羽目になります。

しかもその目がどう出るのかは、お金を借りた本人にはよくわかっていても、連帯保証人にはまったく情報が伝えられていない場合のほうがほとんどなのです。

連帯保証制度に対しては、一部で長い間その不当性の是正が主張されています。

資本主義のメイン会場であるアメリカでは、フェアな限度での個人保証制度は存在しますが、一方的に連帯保証した人だけが丸裸になる危険を背負うこのような制度はありません。

そしてそれがすぐれた人材を被雇用者に向かわせず起業に向かわせる社会の原動力になっているといわれます。

民法学の我妻栄博士は「近代法における債権の優越的地位」という52年前の論文のなかで、「債権はもはや物権に到達する手段には収まらない。債権はそれ自身独立した経済的力だ。資本主義経済における財産とは、物権が主要素なのではなく、むしろ債権が主要素だ」(要約)と、財産の債権化を既に看破されています。

よく勘違いされるのですが、債権とは、あなたがお金をかした相手のポケットに勝手に手を突っ込んでお金を取り出せる権利ではありません。

それは相手にポケットからお金を”出させる”命令ができる権利です。

債権が人を支配する権利だと言われるのはこれがためであり、債権が徐々に優越的地位を獲得していったのもそれが理由です(私見)。

あなたは人がいいと思われたいというような安易な動機で、理由もなく人を支配する権利、債権の槍の下に進んで座ろうとするべきではありません。

昨今のTVのコマーシャル枠が消費者金融の会社ばかりに大量に買われている理由を、一度よくお考えになってみてください。
 

 
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