元生徒との結婚という、例外の結実

男子生徒「強姦」で服役終えた元教師、相手の元生徒と結婚(CNN)

刑法の177条をご覧下さい。

第177条〔強姦〕

「暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は,強姦の罪とし,3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も,同様とする。 」

個人的にはこのニュースを読むとなんだかわからないさわやかな後味の残る気がするのですが、日本の法律でその理由を検討してみます。

(被害者が男児だったので女子という文言には一応拘らないことにします)。

私たちの刑法の177条、強姦罪が守ろうとするのは「性的自由」と呼ばれる利益です。

「性的自由」とは、こと性行為にあっては愛情という内心をもとにそれを誰と行うかを自立的に行動決定できる自由のことだと言い換えられそうです(私的定義)。

すると事は「愛情」を起点に語られる性質の、すなわち外形判断にそぐわない性質の法益であるということになり、被害者にとっての判断能力が十分発達した時点での内心が踏みにじられたら、それはすなわち「性的自由」が侵害されたということになります。

そのため女性が13歳未満の時には、暴行・脅迫がなくても、また同意があっても強姦罪になるわけです。

なぜなら彼女の判断能力は、自身を守るのに十分発達しているとは一般には考えられないからです。

最高裁判例にあっても、「復讐のために全裸写真をとった行為は性的自由は侵害していない」としたものがあります(昭和45年1月29日)。

さらに最高裁はかつて不明確だといわれた青少年に対する「淫行」の意味を、(1)青少年の心身の未成熟に乗じた不当な手段による性交又は性交類似行為、(2)相手を自己の性的欲望の満足の対象としてしか扱っていないと認められる性交又は性交類似行為の2類型であるともしています(昭和60年10月23日)。

CNNによれば、女性教師は、当時小学校6年生の男子生徒と性的関係をもち、児童強姦罪で6ヶ月の服役後、再び同じ生徒と性的関係をもって同じ児童強姦罪で7年半服役して、とうとうその男性と結婚することになりました。

どうやらこの女性教師の行為は日本の最高裁の基準を用いれば、当時外形的には自己の性的欲望のため不当に男児の性的自由を侵害したと見られたようです。

同意があっても男児の判断能力の未発達を法的に擬制して罰せられたといえます。

とすると男児は10年かけて、法律の擬制を超えて彼の判断能力が正しかったことを証明したようです。

一方、女性教師のほうも当時の内心が法律が判定したような児童を性的欲望の満足の対象にしか扱ったものではなかったことを10年かけて証明したような後味を覚えます。

子ども達を守るため、これからも「未成熟ゆえ同意があっても強姦になる」という法律による未成熟の擬制は存続されなければなりません。

しかし今回に限って本質的に女性教師と男児が争ったのは、法律よりも得体の知れない形をした怪物だった気がします。
 

 
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