ホームヘルパーへのセクハラと権力の確認

セクハラ ホームヘルパー4割被害 急がれる防止策(Yahoo)
「「セクハラされた経験がある」と答えたのは153人(37.9%)。自由記述では「利用者の息子に押し倒されそうになった」など、犯罪になりかねない事例の報告もあった。」

通称、男女雇用機会均等法の21条をご覧下さい。

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律

第21条(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の配慮)

事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう雇用管理上必要な配慮をしなければならない(以下略)。 」 

残念ながら、男女雇用機会均等法では直接性的嫌がらせを罰することができません。

そのため民法709条を用いて加害者に不法行為責任をとらせたり、ヘルパー派遣会社の責任(債務)不履行責任を追及するなど、別の法律で対応していくことになります。

優位な立場にある人が立場上逃げ場のない人を追い込むことをセクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメント、アカデミック・ハラスメントなどと呼びますが、あなたの感受性をもってすれば被害者側にはどれほど理不尽な憤りを覚えるかご想像に難くないでしょう。

それでは反対に、なぜ私たちには弱い立場にいる人を追い込んでしまう習性があるのかにはご想像を及ばせることが可能でしょうか。

私たちの社会は効率よく学ぶ仕組みとしての大学や、効率よく利益を上げる仕組みとしての会社を作り上げました。

しかし一旦人間の手に、学位を与える、昇進を左右するなどなにがしかの権力が渡されれば、会社や学校本来の目的でなくとも、内部の人に対してギリギリまで(つまり法に触れるまで)その権力をもって譲歩を要求できることに気がついてしまいます。

そしてもともと性の自由や、勤労の自由、学問の自由などはお互いがその利益を調節しあいながら守らなければならない類の権利であるため、構造内部にとどまりたい学生や勤労者は、その権利を不合理なまでに自ら退去させられてきたのがこれまでの歴史でした。

6年前に改正された男女雇用機会均等法はその一場面に光を当てて注意喚起を促しています。

人は生まれてすぐ泣き叫び、全方位にどこまでその権力を及ばせることができるかを確認します。

それは人間には最初から、職場ではハラスメントを起こし、頼るしかない乳児を虐待する父親・母親になり、人の命を脅かして欲しいモノを奪おう、あるいは命そのものを奪う人に変わってしまう性質が、あなたにも私にも標準装備されており、それは根元的な生きる術なのだと宣言しているかのようです。

そしてもしそうであるならば社会的権力が手渡されたそのこと自体が、人間に押してはならないスイッチを押させてしまう危険性を孕んでいると一旦法的に擬制しておくことが、その上で道徳的規範をさらに築く礎になるのではないでしょうか。

実際その擬制憲法で実行されており、それが三権分立制度や国民主権制度として形作られています(私見)。

私たちは社会のどのような場面でも自分達の性質を忘れるべきではありません。

社会構造上いつまでもその無力感に苦しむ人は、駅のホームで並ぶ人の背を一押しするだけで、被害者にとっての死の司祭にはすぐなれますし、そのために今日も悲惨な事件が今にも起ころうとしているのですから。 
 
 

 
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