新自動ドアと知的財産という未来へのバトン

【ファンキー通信】自動ドアの革命! その名も…(LivedoorNews)

「この「新発想 自動ドア」はなんと、通行する人や物の形に合わせて開く。まるでSF映画に出てくるUFOの中から、宇宙人がいきなりヌッと出てくるようなイメージだ。何もない壁から突如として物体が現れるサプライズ。」

実用新案法の第2条第1項をご覧ください。

第2条(定義)

「この法律で「考案」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作をいう。(以下略)」 

 
物体ではない財産についての権利を無体財産権と呼びます。

別名知的財産権、いわゆる知財です。

知財のうち、特許権実用新案権意匠権商標権の四つは特許庁が押さえている畑で、これらの権利の畑をまとめて産業財産権と呼びます。旧称の工業所有権です。

実用新案権は特許法ほど高度な創作であることを要しませんが、登録を受けることができるのは物品の形状や構造、組合せに係る新案に限られ、方法の発明は登録できません。

実用新案は出願すると審査なく登録され、実用新案権者は,登録実用新案を業として利用する権利を専有しますし、他人にそのアイディアを使わせる権利を設定することができます。

つまり特許権がそれまで世の中に全くなかったような斬新なアイディアを守ることに対し、実用新案は既存のアイディアの組み合わせまで守備する権利だといえそうです(私見)。

かつてフランス人権宣言で、所有権は神聖不可侵の権利だと宣言されましたが、それは地元の領主による好き勝手な搾取に対する絶叫でした。

そしてそれは自分の奪ったチェスの駒は、ずっと自分の手元に置かれて動かないのだというルールを約200年前に定着させ、その財産権の保障は資本主義経済をここまで発展させる原動力になりました。

反面、所有の絶対保証で貧富の格差が壮絶になってくると、ワイマール憲法がその153条で所有権といえども公共の福祉の前には道を譲るべきだとし、財産権はその絶対性を剥奪されました。

私たちの憲法もこれに習って財産権に一定の歯止めをかけています。

無体財産も目に見えないものに対する財産権ですが「公共の福祉」が、これを永劫濫用することを許しませんので、特許権が20年、実用新案権は6年で権利が一応終了します。

しかし目に見えないアイディアも国がその権利を保護する制度は、今回の自動ドアのようにメーカーが未来を実現していく基盤になります。

なにより新しい知的財産が生まれたというニュースは、子供達に未来を信じる心を芽吹かせるという、見逃せない効果を内包しています。
 

 
(Copyright(C) 恵比寿法律新聞)