労働者の盾は気がつけば矛となった

13人が「死傷者多数」認識=懇親会で話題-3次会も、JR西のボウリング問題 (Yahoo)

「幹事は「30人も予約したため、キャンセルし難かった」と説明している。」

憲法の28条をご覧ください。

第28条〔勤労者の団結権団体交渉権その他団体行動権

「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は,これを保障する。」

憲法は二八条で、労働者の団結権団体交渉権団体行動権のいわゆる労働三権を保障します。

団結権は、労働者が団体を組織・加入する権利、団体交渉権とは、労働者が労働条件を交渉する権利、団体行動権とは労働者が争議行為をなす権利のことです。

最高裁全逓東京中郵事件判例で、労働三権は経済上劣位に立つ労働者に対して実質的な自由と平等を確保するための手段として保障されていると明言しています。

ところであなたは全ての法律が対立利益のバランスによって生成されていることをご存じでしょうか。

憲法もその例外ではなく、一方があなたが個人として要求する利益、つまり自由権であり、もう一方があなたが社会の一員として要求する利益、つまり民主権です。

憲法の下全ての法律において、”個人のあなた”の自由は、常に”集団としてのあなた”自身の要請により一定程度制限されています。

憲法28条においては、あなたの自由権労働三権として表現されますが、ではこの条文を立体的に存立ならしめる対抗利益とはなんでしょうか?

あなたの労働三権に対抗する社会の利益を、憲法で「公共の福祉」と呼びます。

かつて山田鋼業事件と呼ばれる最高裁大法廷の判決がありました。

そこでは「28条は勤労者の団結権団体交渉権その他の団体行動権を保障する。しかし同時に28条は国民の平等権、自由権、財産権等の基本的人権も保障する(公共の福祉)。公共の福祉労働三権の行使の前にことごとく排除されるものではなく、労働三権が公共の福祉に対して絶対的優位を有することを認めているものではない(意訳)」という趣旨の判示をしています(昭和25年11月15日)。

現在、記者会見場では三つの権力者達が罵りあいを繰り広げています。

鉄道会社・報道会社、そしてかつてC.W.ミルズも「新しい権力者」と呼んだ労働組合です。

サンドバックになっているのは元国営鉄道会社、もっとも俯瞰能力を失っているのが報道会社、そして労働三権という盾で守られたボーリング大会において、人間として正当な行動がとれなかったため盾の強大さが強調されてしまっているのが労働組合という一大権力です。

かつて労働組合は世界中で抑圧され、日本でも旧治安警察法第17条によりこれを禁止されており、最終的に労働組合が合法化されるのは日本が戦争に負けるまで待たなければなりませんでした。

人は皆、一人一人は純粋に自分と家族の幸福を追求する存在でしかありません。

起業家も労働者がとらないリスクを一人で負って自身の利益を追求するシステムをつくる戦いに挑む一人の人間です(そしてその大半は破れます)。

そしてその反面、システム創出の過程でたくさんの雇用を労働者に提供します。

労働者も一人一人は自分と家族の幸福を追求する小さな存在でしかありませんが、一旦その権利獲得のため集団化という手法をとれば、その権力は時に籍を置く会社そのものの形を変形させてしまうほど強大になります。

せっかく「労働するあなた」が「起業したあなた」から富を奪い返すため手に入れた労働三権という権力、それを生かすのも殺すのも、やはりあの会見場にいるあなた次第です。
 


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