心理カウンセラーというシマをめぐる省の攻防

心理カウンセラー:二つの国家資格に相談者も混乱(毎日新聞)

国家行政組織法の2条2項をご覧ください。

第2条(組織の構成)

「2 国の行政機関は、内閣の統轄の下に、その政策について、自ら評価し、企画及び立案を行い、並びに国の行政機関相互の調整を図るとともに、その相互の連絡を図り、すべて、一体として、行政機能を発揮するようにしなければならない。(以下略)」

国家行政組織法は六法では内閣法に付して配置されます。

内閣とは私たちが選んだ国会議員、その彼らがまた選んだ総理大臣が組織する国の仕事をやる軍団長たちのことです。

各軍団長の下にいる省庁は行組法2条によれば横の連絡も緊密にとり、私たちの生活により資するような行政を行ってくれているはずです。

しかし行組法2条にはなんら罰則がありません。

現実には大学を優秀な成績で卒業したあなたがいずれかの省庁に属することになると、行組法などどこえやら、あなたは極力組織の現権益の拡大、退役後の天下り先企業をできるだけ獲得できるよう、管理先をひろげる仕事が求められますし、いつのまにかあなた自身
も後輩に対してそれを要求するようになります。

今回の記事中にあるそれぞれの試案を提出した機関の代表の肩書きにご注目ください。

医療心理師法案」が経産省、「臨床心理士法案」が文化庁すなわち文科省の管轄です。

つまりこの戦いは一方は心理カウンセラーは産業だといい、もう一方はアレは学問だと言っています。

結局どちらもシマを渡せということです。

省庁の仕事が縦割りになり行組法本来の目的を疎外する根本原因は、入手した権力を最大限利用しようとする人の属性から発しており、それはモンテスキューが「法の精神」のなかで250年前に指摘済みです。

それは避けられないもので私たちは効果のない不平不満ばかりをならべるべきではありません。

幸い彼らは法の順守をその第一義の仕事としています。

奇しくもモンテスキューは「法の精神」のなかで、当時の日本の法律を「死刑ばかりである」と嘆いています。

これを避けるべく私たちが新たに手に入れた国民主権政府という権力が、自己増殖することを止められるのも、やはり法でしかありません。

それはたとえば郵政民営化法をもって不要に拡大しすぎた公務員の数を減らそうと、ちょうど今国会で闘われているようにです。
 


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