買収への対抗策とゲゼルシャフト

取締役「期差選任」テレビ東京が検討(読売新聞)

商法の256条1項をご覧ください。

第256条〔任期〕

「取締役の任期は2年を超ゆることを得ず(以下略)」

期差選任は別名「スタッガードボード」(捻じれた役員会)と呼ばれます。

任期2年の取締役達のうち半分ずつを1年おきに改選するように設定し、買収者の完全支配時期を1年以上遅らせるイザという時の為の予防策です。

敵対的買収の予防注射には他にも「ゴールデン・パラシュート」という経営陣の退職金を凄まじい金額にしておき、買収コストをやたらと高いものにする手法も有名です。

他にいざ買収をかけられてからの服用薬としても買収行為の法律的障害を突く「ショー・ストッパー」というものもあります。

さらに儲ける部門のほとんどを売却してしまう「スコーチド・アースディフェンス」(焦土作戦)や、買収側をマスコミを使ってガンガン叩く「ジューイッシュ・デンティスト」(ユダヤの歯医者)という手法があります。

しかしそもそも会社は誰のものなのでしょうか。

株主の会社財産に対する実質的関係は、実は民法の組合に酷似しています。

組合とは、誰かがお金を集めて事業を始めようとした時借金をしたのでは、なにかと不都合があるので、皆でお金を出し合って、所有者として全員で権利義務を負うことにした民法の典型契約の一つです。

しかし組合では権利義務にいちいち全員の名前を連ねる必要があるため、そのめんどうを解消するため法人格を与えたものこそ、会社なのです。

組合も会社もドイツ語ではともにゲゼルシャフトと呼ばれます。

ゲマインシャフトが全体の利益を意味するのに対しゲゼルシャフトは個人の利益追求のための装置を意味します。

これを忘れなければ、議論の本質を見失わないはずです。
 

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