人:誤る生き物

保安係が目視怠る違反か 東武伊勢崎線踏切事故(共同)

「東京都足立区の東武伊勢崎線竹ノ塚駅踏切で4人が死傷した事故で、事故当時、近くの詰め所にいた保安係4人のうち遮断機の操作をしていた小松完治容疑者(52)=業務上過失致死傷容疑で逮捕=を除く3人が、線路の目視を怠るなど社内規定に違反したとみられることが16日、警視庁の調べで分かった。」

民法715条の第1項をご覧ください。

第715条〔使用者の責任〕

「或事業の為めに他人を使用する者は被用者が其事業の執行に付き第三者に加へたる損害を賠償する責に任ず但(以下略)」

使用者責任とは会社が従業員のやらかしたことの損害を賠償しなければならないという原則です。

会社が従業員を使って利益を得る以上、損失も会社に払わせようという考え方が基礎にあります。

これを報償責任といいます。

会社が損害賠償を支払った時は,会社は従業員にこれを返すように求めることができますが(715条)、危ない仕事に就かされていたのは従業員ですし、会社はどちらにしろ保険でこれをカバーできるはずですので、最近は判例も会社の求償権を限定して考える傾向にあります(最高裁判例 昭和51年7月8日)。

人は機械ではありません。

会社が危険な事業の運営を設計するときは、必ずヒューマン・エラーという人間特有のリスクを要素として計算する義務があります。

動線設計上、これほどの悲惨な事故が起きる可能性のあった現場を、人間の目だけに任せっきりにしていた会社の責任は重いとしかいいようがありません。

「社内規定を無視する」ことなど、当然予測される人間のありふれた特性の一つに過ぎないのですから。
 

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