社会福祉法の3条をご覧下さい。
第3条(福祉サービスの基本的理念) 「福祉サービスは、個人の尊厳の保持を旨とし、その内容は、福祉サービスの利用者が心身ともに健やかに育成され、又はその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するものとして、良質かつ適切なものでなければならない。」 |
ロンドンに1年ちょっと住んでた頃の話です。
クラファムコモンという川の南側、あまり治安のよくないあたりにある古いフラットに住んでいました。
なんでも昔、夏目漱石さんが住んでいたあたりなのだとか。
少し前に喘息になっていた私は夜中にどうにも息ができなくなってきて「確か川向こうに病院があったはず」と自転車に乗って病院に行くことにしました。
道すがらパトカーがとまってたので「あの~ゼイゼイ、病院はどの辺でしたっけ?ゼイゼイ」と男女の警官に尋ねてみました。
額からは呼吸できなくて脂汗がでてきていました。
「川のあっちらへんやで~」と教えてくれたので礼をいってゼイゼイ夜中のロンドンをまた自転車でこぎだしましたが、しばらくしてそのパトカーが孟スピードで私に向かってバックしてきました。
警官は私を引き止め、しばらくすると無線で救急車を呼ばれてしまいました。
気がつくと私は自転車ごと夜中の路上で強引に救急車にのせられていました。
おっかない黒人の救急隊のおばさんにこっぴどくしかられながら病院に運びこまれることになりました。
その時もふくめてロンドンで一週間入院したこともあったんですがいつも医療費は薬代の1000円くらいしか取られませんでした。
かの地では学生からは医療費というものをとらないらしいです。
病院の調査員みたいなおねえさんは学生証もなにも確認せずあえてふかく突っ込まないでいてくれたようでした。
ただ日本の両親に「入院代タダだったよ」と国際電話しても、一向に理解できないようでした(そりゃそうだ。) 。
普通、福祉ときくと、善男善女がそろいのスウェット着ていいことしてる退屈そうな絵しか浮かばないかもしれません。
しかし私にとっての「福祉」とは、猛速でバックしてくる夜中のロンドンのパトカーをのことです。
つまり福祉は、強い者から弱い者への「気合」かもしれません。
そうすると社会福祉法の3条の趣旨を十分実現できない国とは、強くあるべき人も弱いままの国なのだと逆引きできる可能性さえあります。